気候変動対策プロジェクトの目的
Harvard University
Harvard Seismology Group
Department of Earth and Planetary Sciences
Professor Miaki Ishii
2024年が観測史上最も暑い年となり、この傾向は2025年にも続いています。気温の上昇は前例のない気象現象も引き起こしており、2024年には世界中で少なくとも1,700人が亡くなり、82万4,000人が避難を余儀なくされました。ニュースでも毎日のように目にします。集中豪雨、熱波、降雪、猛烈な台風…。こうした極端気象は、今後さらに悪化すると予測されています。
気象観測は1800年代から150年以上にわたって世界中で行われており、産業革命前と現在を比較し、極端気象がどのように悪化してきたのかを分析し、予報や今後の傾向に役立てられるはずです。しかし、実際にはデータの多くは紙などのアナログ形式で保存されており、研究(つまりコンピュータを用いた分析)には利用できない状態にあるのです。
特にグラフ形式で記録されたデータを、コンピュータで分析可能な形に変換する作業は非常に手間がかかります。画像を一枚ずつデジタル数値に変換するのは手作業であり、地道で時間のかかる作業です。科学的価値が高いことは間違いないのですが、正直なところ研究活動としてはあまり魅力的とは言えず、これまで敬遠されてきました。このような背景からアナログ記録のスキャン画像を読み込み、現代の分析に適したデジタル情報へと変換するアプリが開発されました。理想的には自動変換できるのが望ましいですが、記録の形式や品質のばらつきがあるため、現状では完全自動化は困難であり、人間の補助が必要です。
その上、150年以上分のアナログ記録は膨大な量になります。1台の気圧計は一般的に1枚の紙に1週間分の気圧変化を記録します。つまり、年間で52枚、100年で5,200枚になります。1日単位で記録されていた場合はさらに増えます。加えて観測所では複数の気圧計を使用していたり、温度計や湿度計など他の機器も存在します。
記録はあっという間に数万枚に達し、しかもそれは1箇所の観測所だけの話です。世界気象機関には8,000以上の観測所が登録されており、世界中のデータをデジタル化するには途方もない作業が必要です。もはや科学者だけでは不可能であり、市民科学者の協力が不可欠です。
参加者は、過去の気圧、気温、湿度の記録記録と、それをアプリを用いてどのようにデータ抽出するかを学びます。アプリに対するフィードバックは、今後の改良に活かされ、デジタル化されたデータは過去100年の気象データベース構築に貢献します。
データベースが十分に構築されれば、過去の気象現象と現代のものがどのように異なるかを分析し、その科学的価値を示すことができます。たとえば、急激に発達する低気圧「爆弾低気圧」や線状降水帯のような現象は、温暖化により悪化すると予測されていますが、現在のところその根拠は数値シミュレーションに限られており、観測に基づくものではありません。デジタル化されたデータにより、こうしたシミュレーションの妥当性を検証でき、将来予測の精度向上にもつながります。
また、デジタル化された気象データは、非気象的な自然と人口現象の記録も含まれています。たとえば、地球規模の気候異常(火山性の冬)を引き起こした1883年のクラカトア火山の噴火や20世紀中頃に頻繁に行われた原子爆実験は、気圧記録に明確に残されています。
このプロジェクトの成果は、気候科学だけでなく、火山学など他の地球科学分野にとっても新たな学問の土台となります。また、同時に私たちへの警鐘にもなります。アナログデータは劣化が進んでおり、永久に保存できるわけではありません。中にはすでに修復不可能なものもあります。その上、紙といった物理的媒体は保管スペースを必要とし、保管コストの増加や利用頻度の低下により、しばしば廃棄対象とされます。実際、カリフォルニア工科大学や気象庁などの機関では、適切にデジタル保存されることなく一部の資料が廃棄されています。
本プロジェクトは、こうした歴史的データが持つかけがえのない価値を示し、アナログデータの救出が急務であることを社会に強く訴え、専門家と市民科学者が協力してその救出に取り組む機運を高めることを目指しています。
地震計記録のデジタル化プロジェクト
地震計で記録された最初の地震は1889年4月17日にドイツで観測された日本の地震で、それ以降1980年後半までの100年近くにおよぶ膨大な記録は、地震、火山、地球温暖化など様々な研究にとって非常に貴重なものです。
しかし、それらの記録はアナログ媒体のため、そのままでは解析できません。また、紙などの劣化も進行しています。この状態を放置すると100年近くの記録が失われてしまうので、ハーバード大学では、データのデジタル化を開始しました。